ドル/円相場は、3月12日の96.71円をピークに、足元では94円台まで値位置を切り下げる展開になっている。前週は総じて95~97円の高値圏で揉み合う展開になったが、週末にキプロス情勢の先行き不透明感が蒸し返されたことで、欧州債務危機の再発懸念からドル買い・円売りポジションを解消する動きが目立った。
キプロスでは銀行預金への課税方針が示されている。財政再建の道筋が描けない中、預金金利への課税で58億ユーロ(約7,100億円)の徴収が予定されている。これを受けて、キプロスでは銀行預金の取り付け騒ぎが発生しており、周辺国でも同様のリスクに対する警戒感から預金流出の動きが発生すると、金融システム全体の混乱を促す可能性もある。この状況下で、イタリアの政局リスクなども蒸し返されると、パニック的な円高リスクに対する警戒も必要である。マーケットでも、今回の措置に対する評価は分かれており、欧州債市場の反応を見極めるまでは、円相場の下落余地は限定されよう。改めて欧州債市場の動向を見極めるステージになる。この混乱が本格化すると、4月に欧州中央銀行(ECB)が追加利下げに踏み切る可能性も高まることに注意が必要。
もっとも、円サイドの環境は引き続きドル高・円安トレンドを支持しており、円の戻り売り基調そのものは維持されよう。4月の定例会合を待たずに日銀が追加緩和に踏み切るとの警戒感も強く、引き続き円買いポジションを拡大できる状況にはない。リスクマーケットが総パニック状態に陥るような展開が回避できるのであれば、改めてドル買い・円売りを仕掛ける好機となるだろう。
今後1週間の予想レンジは、93.00~96.50円。